外国映画

映画レビュー「愛と銃弾」

2019年1月17日
組織から始末を命じられた女は、元カノだった。愛か忠誠か? 殺し屋は迷わず愛を選択。組織と殺し屋との壮絶な闘いが始まった。

殺し屋は組織を裏切り愛を選んだ

マフィアが抗争に明け暮れる犯罪都市ナポリ。水産市場を仕切る組織のボスが、敵の襲撃を受ける。弾は命中。しかし、何とか一命は取り留めた。

敵は仕留めたと思ったようだ。そこで、ボスはこの際、自分は死亡したことにして、余生を愛妻とのんびり過ごすことに決める。

ところが、その企みを入院先で看護婦に聞かれてしまう。秘密が漏れたらせっかくの計画も水の泡だ。ボスは看護婦を始末するよう手下に命じる。

刺客に指名されたのは“タイガー”と呼ばれる最強コンビ。組織で一番頼りになる殺しのプロだ。

さっそく殺害に赴く二人。だが、コンビの片割れであるチーロは看護婦を見て驚く。少年時代に付き合っていた元カノのファティマだったのだ。

久々の再会に恋の炎は再燃。チーロはあっさり組織を裏切り、ファティマとともに逃亡する。

もちろん安全に逃げ切れるわけはない。次々と襲いかかる追手。チーロはことごとく返り討ちにしていくのだが、やがて、絶体絶命の危機が訪れる――。

題名どおり、ラテン系の情熱的なロマンスと、派手な銃撃戦が全編を彩る。合間合間にはミュージカル風の歌唱シーンも挟まる。サービス満点の娯楽映画である。

ミュージカル場面は、歌詞が完全にセリフ化しているため、ストーリー展開は妨げられず、意表を突くラストまで、緊張感は一瞬も途切れない。

ファティマへの愛と、組織への忠誠心。このダブルバインドをいとも簡単に解いて、愛に突っ走る明快さもいい。

ただ、コンビを組むロザリオとの友情と、ファティマへの愛。これは容易には割り切れない。

組織に忠実なロザリオは、チーロたちを追ってくる。親友であろうと、戦わざるを得ない。倒すか、倒されるかの二択。それとも、ほかに選択肢はあるのか。息詰まるクライマックスは、緊迫度100パーセントの面白さだ。

話は別だが、「看護師」ではなく「看護婦」と的確に訳した日本語字幕にも拍手を送りたい。ヨーロッパ語の多くは、女性と男性で名詞の形が違う。本作の場合は女性であり、ナポリという土地柄を考えても、看護師ではピンとこない。グッド・ジョブである。

愛と銃弾

2017、イタリア

監督:マネッティ・ブラザーズ

出演:ジャンパオロ・モレッリ、セレーナ・ロッシ、クラウディア・ジェリーニ、カルロ・ブッチロッソ、ライツ

公開情報: 2019年1月19日 土曜日 より、YEBISU GARDEN CINEMA、新宿K’s cinema他 全国ロードショー

コピーライト:© MODELEINE SRL ・ MANETTI bros. FILM SRL 2016

文責:沢宮 亘理(映画ライター・映画遊民)

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