外国映画

映画レビュー「ロードゲーム」

2025年10月30日
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孤独なトラックドライバーが、殺人事件の容疑者を追う。“オーストラリアのヒッチコック”が生んだ傑作サスペンス、日本劇場初公開。

冷凍豚肉とバラバラ死体

豚肉を運ぶトラックドライバーのクイッド。自分から女性ヒッチハイカーを拒んだくせに、彼女が別の男に拾われると、何だか損したような気分になっている。おまけに彼らのお陰でモーテルは空室が埋まり、相棒の野犬(ディンゴ)とともに車中泊を余儀なくされてしまう。

翌早朝、何とはなしにモーテルを眺めたクイッドは、昨日の男が部屋の窓から路上をそっと覗き込んでいるのに気付く。ゴミの回収を気にかけているらしい。

近隣ではちょうど女性の連続殺人事件が勃発し、ニュースになっていた。もしやと思ったクイッドは、男の運転するバンの後を追うのだが――。

モーテルに入った男がヒッチハイクした女性を手にかける衝撃的な場面が早々に映し出される。クイッドが目を付けたとおり、男は犯人なのだ。ゴミはバラバラ死体なのだろう。

ところが、警察は犯人を追うクイッドの挙動に不審をいだき、行き交う人々もクイッドを犯人扱いする。クイッドは自らの潔白を証明するためにも、犯人を捕獲しなければならない。

追跡の途中、クイッドはパメラというヒッチハイカーらしからぬ上品な若い女を乗せ、意気投合。二人して犯人を追いかけ、追い詰めていく。

“愛犬“がいるとはいえ、いつも一人でトラックを走らせている孤独なクイッドは、妄想逞しくして独り言をつぶやく癖があり、ちょっと変人めいた男。対してパメラは、窮屈なエスタブリッシュメントの世界が嫌で、家を飛び出してきた気の強い娘。

成り行きで結成されたこの男女コンビが、危険な冒険を通して、心を接近させていくプロセスが楽しい。

主演のクイッドに扮するのはステイシー・キーチ。パメラ役にはジェイミー・リー・カーティス。ともに当時人気絶頂のハリウッド俳優だ。そして、メガホンを取ったのは、オーストラリアのヒッチコックと称されたリチャード・フランクリン。

すばやいカットバックを用いたサスペンス描写は、まさにヒッチコックさながら。クイッドのちょっとニューロティックな人物造型も、ヒッチコック映画のジェームズ・スチュワートを彷彿させる。ほかにも随所にヒッチコック流ユーモアが溢れ、さらにはヒッチコックへの直截的なオマージュも見られる。

また、これは余談になるが、トラックの中の会話で、パメラが「ボストン絞殺魔」に言及する場面があり、その映画化作品にはジェイミー・リー・カーティスの父親であるトニー・カーティスが主演していたことを思い出す人も多いだろう。

クライマックスの手に汗を握る超低速カーチェイスは圧巻。トラックに積まれた食肉とバラバラ死体との連想関係が醸し出す恐怖感も、最後まで映画に緊迫感を与えている。

映画の面白さがたっぷり詰め込まれた、サスペンス映画の傑作。日本劇場初公開。

映画レビュー「ロードゲーム」

ロードゲーム

1981、オーストラリア

監督:リチャード・フランクリン

出演:ステイシー・キーチ、ジェイミー・リー・カーティス、マリオン・エドワード、グラント・ペイジ

公開情報: 2025年10月31日 金曜日 より、シネマート新宿他 全国ロードショー

公式サイト:https://roadgame.jp/

コピーライト:© STUDIOCANAL - Quest Films Pty Ltd. All Rights Reserved.

配給:フリークスムービー

文責:沢宮 亘理(映画ライター・映画遊民)

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