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SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2025 “観光客が難民へ”リアルな設定「火山のふもとで」

2025年8月31日
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海外招待作品の1本「火山のふもとで」。ロシアによる祖国侵攻で帰国できなくなったウクライナ人家族の困惑と不安を描いた秀作だ。

7月18日(金)から26日(土)まで開催されたSKIPシティ国際Dシネマ映画祭2025。海外招待作品「火山のふもとで」は、第97回アカデミー賞国際長編映画賞(旧外国語映画賞)部門でポーランド代表に選出された注目作である。

観光客が一夜にして難民に

火山の島として知られるスペインのテネリフェ島に、観光で訪れていたウクライナ人の4人家族。休暇を過ごし最終日を迎えるが、翌朝の帰国便が突然キャンセルされた。ロシアがウクライナに侵攻したのだ。

帰国の道を閉ざされた家族は、島に留まらざるを得なくなる。ニュース映像からは祖国の緊迫した状況が伝わってくるが、どうすることもできない。家族のイライラは募るばかりだ。

ただホテルに籠っているわけにもいかないから、しかたなく観光するのだが、心から楽しむことはできない。

そんな中、娘のソフィアは、思春期の少女らしい冒険心と気まぐれさを発揮し、ひとり島をぶらつく。祖国の非常事態が気がかりだが、せっかくの休暇を無駄にしたくないという気持ちも強いのだろう。

ソフィアはある少年と知り合って、会話を交わす仲になり、その進展に興味をかき立てられる。だが、ソフィアにその気はないようで、観客の期待はあっさり潰(つい)えてしまう。

思わせぶりで何を考えているか分からない少女である。そんな彼女が断崖からダイブして遊ぶ地元の少女たちに交じり、海に飛び込むシーンが印象的。物語の大筋とは関係ないが、彼女が本来求めていたであろう幸福感、解放感が凝縮されていて素晴らしい。

ロシアのウクライナ侵攻という、実際に起きて今もなお継続中の出来事をテーマにした作品。物語はフィクションだが、取り巻く状況はノンフィクション。そのリアルな緊張感が全編に息づいている。

SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2025 “観光客が難民へ”リアルな設定「火山のふもとで」

火山のふもとで

2024、ポーランド

監督:ダミアン・コツル

出演:ソフィア・ベレゾウスカ、ロマン・ルツキー、アナスタシア・カルピエンコ、フェードル・プガチョフ、マイク・メンサー

公式サイト:https://www.skipcity-dcf.jp/2025/

コピーライト:© Lizart Film, Hawk Art, MGM, TVP

文責:沢宮 亘理(映画ライター・映画遊民)

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