外国映画

映画レビュー「星の時 4K」

2026年8月20日
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田舎から都会に出てきた19歳のマカベーア。読み書きが苦手で、仕事も失敗ばかり。そんな彼女に初めて恋人ができたのだが――。

不遇の人生は好転するのか

主人公は、ブラジルの大都市サンパウロで働く19歳の地味な女性、マカベーア。田舎から出てきてタイピストとして働いているが、基礎的な読み書きも満足にできず、失敗ばかり。早くも解雇の危機に瀕している。

住居は古いアパート。3人の女性との相部屋だ。食事はもっぱらホットドッグとコカコーラ。栄養が足りないせいか体つきは貧弱で、女性的魅力に欠ける。

恋愛とは無縁の人生を歩んできた。だが、男に興味がないわけではない。つねに男性の視線を気にし、地下鉄の車内では男の体臭にうっとり。その記憶を反芻しながら、ベッドで秘かに自らを慰める。

仕事もプライベートも冴えないマカベーア。その情けない人生を、映画は淡々と描写していく。これまでの恵まれない境遇には言及されるものの、そこに過度な同情はない。だからと言って、冷たく突き放してもいない。彼女は悲劇のヒロインでもなく、喜劇を演じるピエロでもないのだ。

言うなれば、どこにでも存在する不遇な女性の典型像。映画の世界では美女や悪女などが主人公になることが多く、コメディを別として、このような女性にスポットが当てられることは稀だ。そんな物珍しさもあって、観客は、不器用そうにタイプライターを打つ冒頭シーンから、ヒロインの一挙一動に釘付けとなるだろう。

常軌を逸したお粗末な仕事ぶり。自意識過剰による勘違い。次はどんな失態を見せてくれるのか、興味津々で画面に見入るに違いない。

ところが驚くことに、このマカベーアが男に声をかけられる。冷やかしでも詐欺でもない。本当にナンパされたのだ。工場で働くその男とマカベーアは順調にデートを重ねていく。しかし、生まれて初めてのロマンスに、突如として暗雲が立ち込める。

にわかにロマンティックな展開となる後半、そう上手くは行くまいと思いつつ、観客の心には、マカベーアの幸せを祈る気持ちが芽生えていく。さて、マカベーアに運命の女神は微笑むのだろうか――。

ヒロインに扮した演じたマルセリア・カルタッショ、その出色の演技に目を瞠(みは)る。また、本作の13年後に「セントラル・ステーション」で絶賛されたフェルナンダ・モンテネグロが、彼女の運命を予言する占い師役で出演しており、強烈なキャラクターを披露しているのも見逃せない。

ブラジル人女性監督の先駆的存在であるスザーナ・アマラウが50代で完成させた珠玉の名作。4K修復で甦った鮮やかな映像で、その魅力を改めて噛みしめたい。

映画レビュー「星の時 4K」

星の時 4K

1985、ブラジル

監督:スザーナ・アマラウ

出演:マルセリア・カルタッショ、フェルナンダ・モンテネグロ、ジョゼ・ドゥモン、タマラ・タシュマン、ウンベルト・マニャーニ

公開情報: 2026年8月21日 金曜日 より、新宿武蔵野館、 Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下他 全国ロードショー

公式サイト:https://alfazbetmovie.com/hoshinotoki/

配給:alfazbet


文責:沢宮 亘理(映画ライター・映画遊民)

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