外国映画

映画レビュー「赤い風船 4K」「白い馬 4K」

2025年11月13日
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世界の映画作家に影響を与えたアルベール・ラモリスの名作を、公開当時のフィルムに限りなく近い4Kデジタル版でリバイバル上映。

現実からファンタジーへ

ラモリスと言えば、第一に挙げられるのが、「赤い風船」。少年と赤い風船との間に生まれた“友愛”を描いた作品だ。

街灯にからんだ赤い風船を少年が取って、そのまま持ち去る。しかし、少年が大切に持ち帰った風船を、母親は無情にも窓から放り出してしまう。

ところが不思議なことに、風船は空に飛び去ることなく、そのまま窓の外に留まっている。風船は、少年がどこへ行こうと必ず後をついてくるようになる。

だが、街の悪童たちにとって風船は格好の標的だ。少年は風船とともに路地を逃走するが、しつこい悪童たちは、やがて少年と風船を追いつめる。そして――。

絶望的な状況から、信じられないような奇跡が起こる。不思議な現実から一気にファンタジーへと飛躍する、鮮やかなラストに溜息が出る。

ラモリス監督にとって初のカラー作品。美しい色彩で記録されたパリの街景にも注目したい。1956年カンヌ国際映画祭短編パルム・ドールおよびルイ・デリュック賞を受賞。

ラストシーンには神話が香る

「白い馬」は、野生馬たちのリーダーである美しい白馬と、漁師の少年との心のきずなを描いた作品だ。舞台は、南仏の沼地に面した草原地帯。地元の牧童たちが、この白馬を捕獲すべく執拗に追い続けている。

白馬に魅了された漁師の少年が、その逃亡を手助けするが、最後に追いつめられ、逃げ場を失う――。

徹底したリアリズムの映像が、少年と馬の運命を冷徹に描いていくが、衝撃的なラストシーンには、神話的な香りが漂う。

全編が素晴らしい場面の連続だが、とりわけ印象的なシーンがある。いったん捕獲された馬が自力で逃げ出して、仲間のもとに帰り、新しいリーダー馬と決闘する場面だ。

前足を高く振り上げ、後足だけで立ち、相手の首にかみつき合う、馬対馬の壮烈な闘い。その迫力ある映像に息を呑む。

登場人物のセリフはなく、聞こえるのは音楽とナレーションのみ。シンプルな白黒画像は、映画が秒速24コマの写真芸術だということを再認識させてくれる。1953年カンヌ国際映画祭グランプリおよびジャン・ヴィゴ賞を受賞。

「赤い風船 4K」「白い馬 4K」の2本立て上映。

 

※ほかに、少年たちの友情と冒険を描く日本初公開作「小さなロバ、ビム」(1951)、ジャック・ドゥミが助監督として参加した「素晴らしい風船旅行」(1960)、日本公開時に大ヒットした「フィフィ大空をゆく」(1965)が、いずれも4Kデジタル版で上映される。

映画レビュー「赤い風船 4K」「白い馬 4K」

赤い風船 4K

1956、フランス

監督:アルベール・ラモリス

出演:パスカル・ラモリス、サビーヌ・ラモリス、ジョルジュ・セリエ、ヴラディミール・ポポフほか

コピーライト:© Copyright Films Montsouris 1956

白い馬 4K

1953、フランス

監督:アルベール・ラモリス

出演:アラン・エメリー、パスカル・ラモリス、ローラン・ロッシュ、フランソワ・プリエ

コピーライト:© Copyright Films Montsouris 1953

公開情報:2025年11月14日 金曜日 より、シネマート新宿他全国ロードショー

公式サイト:https://www.akaifuusen4k.com/

配給:セテラ・インターナショナル

文責:沢宮 亘理(映画ライター・映画遊民)

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