日本映画

映画レビュー「ゴールド」

2025年11月5日
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映画のラスト、終わりから始まりへと恋人たちの時間が戻る。魔法のようなワンショット・ワンシークエンス。その輝きが胸を突く。

“専業主夫”になっちゃえば?

小さな企業で事務員として働くミキ。自宅でプログラマーをする傍ら、清掃のバイトもしている弘樹。二人は路上で出会い、恋に落ち、同棲を始める。

恋愛映画ではある。だが、男女を排他的空間に閉じ込めて、恋愛の経緯を追うようなタイプの作品ではない。冒頭にめくるめく恋の描写はある。だがそれはほんの一瞬。その後、主に描かれていくのは、二人が一日の大半を過ごす各々の職場の場面である。

ミキは、露骨な男女差別やセクハラ、そして長時間残業にウンザリしつつも、仲間と談笑したりビールを飲んだりして気晴らしし、毎日をやり過ごしている。

一方の弘樹は、ミキとの同居を契機にプログラマーの仕事にもバイトにも見切りをつけ、別の清掃会社に契約社員として就職する。

だが、男所帯のその会社は、先輩社員によるイジメや嫌がらせが横行し、繊細な弘樹の神経をすり減らしていく。社交的なミキと違って内向的な弘樹は、憂さを晴らす術もなく、疲弊するばかりだ。

憔悴していく弘樹を見かね、「“専業主夫”になっちゃえば?」と持ちかけるミキ。しかし、弘樹は明らかに不向きなその仕事を辞めようとしない。

仕事は得意だが家事は苦手なのがミキ。家事は得意だが仕事は苦手なのが弘樹。ならば、ミキは働き、弘樹は主夫になればいい。それがミキの考えだ。しかし、弘樹はそこまで割り切れない。二人のこのズレが、同棲生活に影を落とし始める。

苦痛。我慢。笑顔が消える。恋が冷める。あっけないものだ。だが、その儚(はかな)さこそが、恋愛の本質なのかもしれない。

ラスト、終わりから始まりへと恋人たちの時間が戻る。魔法のようなワンショット・ワンシークエンス。その輝きが胸を突く。

映画レビュー「ゴールド」

ゴールド

2024、日本

監督:知多良

出演:小畑みなみ、サトウヒロキ、幸田純佳、松木大輔、関口蒼、卯ノ原圭吾、小野孝弘、椋田涼、藤村拓矢、武田祐一、ゆかわたかし、加茂井彩音、いとうたかし、Ksayaka

公開情報: 2025年10月25日 土曜日 より、ポレポレ東中野他 全国ロードショー

公式サイト:https://gold-cinema.com/

コピーライト:© 2024「ゴールド」

配給:キノパトス

文責:沢宮 亘理(映画ライター・映画遊民)

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