ギプスで結び付いた2人
松葉杖を突いた女子高生2人が、ヘアピンカーブ状の坂道を昇り降りしていく。同級生の愛花と詩織。愛花は右足、詩織は左足にギプスをし、包帯を巻いている。
対称形に並ぶ2人は、踏切を渡り、駄菓子屋で休憩する。学校からの帰り道なのだろう。蝉の声が鳴り響く。真夏である。
2人はともにバスケ部。だが部内での立場は対照的だ。愛花はインターハイでの活躍が期待されていたエースだが、詩織は戦力外の補欠。部員たちは愛花のケガによる脱落を残念がる一方、練習中に衝突して愛花にケガをさせた詩織に冷たい視線を向ける。
通常の青春映画なら、ともに負傷した本人たちの複雑な気分にも触れるだろう。だが、本作はその部分にはほとんど頓着しない。足の負傷を共有することで、同じ地平に立った。そのことをひっそり喜んでいる2人が描かれるばかりなのだ。
そんなある日、愛花は負傷以来、疎遠となっていた恋人の中谷が、部室でマネージャーの島崎と浮気している現場を目撃。必死で言いつくろう中谷に愛花はきっぱり見切りをつける。
この後、愛花と詩織は、2人きりの教室でギプスを外し、足の匂いを嗅ぎ合う。2人は単なる親しい友人の域を超えていく。そんな2人に嫉妬し、ヤケを起こす中谷も、愛花の代用品でしかない島崎も、結局は2人の絆を強める道化に過ぎないのだ。
物語は2人きりの世界へと閉じ、愛花と詩織の感情はどんどんエスカレートしていく。練習中の衝突は、偶然だが必然でもあったのだ。
「もう一度爆発してみる?」。2人きりの体育館。向き合ってボールをパスし合う2人の対話が、観念的なものから官能的なものへと変わり、やがて体を密着させ合う。
2人を結び付けると同時に隔ててもいたギプスが取れたとき、何が起こるのか。どこまで行けるのか――。
過剰でもなく、抑制でもなく、等身大に描かれた少女たちの放つエロスがリアルに生々しい。随所に散りばめられた喜劇的セリフやシュールな演出も、物語を弾ませる効果的なスパイスとなり得ている。エンドロールのダンスシーンにも注目したい。
2人のギブス
2025、日本
監督:日高虎太郎
出演:古見陽香里、古林南、田村明石
公開情報: 2025年8月30日 土曜日 より、K’s cinema他 全国ロードショー
公式サイト:https://x.com/Hutarinogibusu
コピーライト:© 小さな映画
配給:小さな映画