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映画レビュー「よみがえる声」

2025年7月30日
被爆者、従軍慰安婦、徴用工…。植民地時代に虐げられた朝鮮人被害者たちの生々しい証言が、修復されたフィルムの中に甦る。

刻まれた歴史の真実

広島・長崎の原爆被爆者、日本軍に強制連行された従軍慰安婦、軍艦島で重労働を強いられた徴用工、関東大震災時に虐殺された朝鮮人…。

大日本帝国による植民地支配は、多くの朝鮮人に言語を絶する苦痛を与えた。朝鮮人にとって決して忘れられない記憶であり、日本人にとっては絶対に目を逸らしてはいけない史実である。

在日朝鮮人2世で“皇国少女”だった朴壽南(パク・スナム)監督は、終戦により帝国支配から解放されると同時に、自らのアイデンティティを取り戻す旅を始める。辛酸を嘗めた在日朝鮮人を訪ね、生の声を聞き、文章にまとめた。

もともと「小松川事件」の加害者である在日朝鮮人少年との往復書簡「罪と死と愛と」で注目を浴びた手練れのライターである。しかし、取材を続ける中で、しばしば相手から言葉が出てこないという事態に遭遇する。だが、その沈黙もまた表現なのだ。朴監督はペンをカメラに持ち替える。

以来、多くのドキュメンタリー作品を発表してきた。ただし、フィルムは劣化する。家には40年前から撮りためた50時間もの16mmフィルムが保管されていた。上映するには修復が必要だ。長女の朴麻衣(パク・マイ)監督がその任を買って出る。こうして本作「よみがえる声」は完成した。

148分のフィルムに収められたのは、同胞たちの生々しい告発と証言だ。淡々と語られる差別と搾取と暴力、そして殺戮。加害者たる日本人は頬かむりし、のうのうと生き続ける。恨みは消えない。消えるわけがない。

某都知事は関東大震災の朝鮮人犠牲者追悼式典に、昨年まで7年連続で追悼文の送付を拒んできている。また、某県知事は昨年、群馬の森に設置された朝鮮人追悼碑を撤去・破壊した。

歴史修正主義者たちが大手を振り、街にはヘイトスピーチが吹き荒れる。不穏なムードが社会を覆っている。本作はそんな時代と人々に対する強烈な一撃となるだろう。悪夢を繰り返してはならない。

よみがえる声

2025、日本/韓国

監督:朴壽南’(パク・スナム)、朴麻衣(パク・マイ)

公開情報: 2025年8月2日 土曜日 より、ポレポレ東中野他 全国ロードショー

公式サイト:https://tinmoku2025.jp/

コピーライト:© 『よみがえる声』上映委員会

配給:「よみがえる声」上映委員会

文責:沢宮 亘理(映画ライター・映画遊民)

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